NICOのブログ(仮)

NICO(@fabrics225)がなんかいろいろ書くブログです。正式なタイトルはそのうち決めます。

色濃く残るもの

「○○を好きになったきっかけは何ですか?」と誰かに聞かれた時、それに当たる瞬間が出てこない事がある。

 

前にも書いたような「物事に触れる」きっかけ自体はいくらでもあるのだけど、具体的にいつ、どのタイミングで「好き」に切り替わったのか。それを一生大事に思えるようなトピックはどれなのか。

 

電気を点けたり消したりするかのような、いわゆる「バチっときた」タイミングは、僕の人生にはほとんどないのだ。

大体の物はグラデーションみたく、「気がついたら」好きになっている。そしてグラデーションなので、興味が薄れたり、また新たに何かを好きになったりして優先順位が変わると、それまで濃かったものがだんだんと淡くなっていく。

 

なので、例えば10年前好きになったものと、今好きなものの「濃さ」はだいぶ入れ替わっている。

逆に言えば、今遠ざかっているものも当時のそれに比べて色合いが淡くなっているだけで、よほどのことがない限りは消えるような事がない、と思う。

その当時確実に何よりも色濃く自分の心を染め上げていたのは紛れもない事実だからだ。

 

そんな心変わり(と言ってもそこまでコロコロ好みを変えてるつもりはないけれど)をする事がある自分が、もうかれこれ20年近くもの間、その「濃さ」が変わらないのがBUMP OF CHICKENだ。

 

20年近くもの間、と表現しているのも、実際本当に好きになったきっかけがないからだ。

 

もちろん触れるきっかけなんていくらでもあって、僕が彼らを知った当時には既に売れっ子で、興味があろうがなかろうがどこかでうっすら曲を聴いたことがあるぐらいの感じだった。

中学生時代のある日、これまた取り立てた理由もなく貯まった小遣いでなんかCDを買ってみようと気まぐれで思い立ち、当時の最新アルバムであった「ユグドラシル」を買った。CDプレーヤーもコンポも持っていなかったので、唯一持っていたPS2に入れてはちょくちょく聴いていた。

 

そうして気がついたら、めちゃくちゃ淡い色合いだった気持ちが色濃くなっていたのだ。彼らの作る音楽はいつしか日常のBGMになり、身体の一部(という言い方をすると気恥ずかしいけれど)のようなものになっていた。高3の年の年末に買った「orbital period」というアルバムなんて、本当に何度聴いたか分からないぐらいで、先に述べた「ユグドラシル」はCDケースがすっかりボロボロになっている状態で今でも持っている。

 

そんな当時は、「ライブに行く」という感覚が全くなかったので、音源をひたすら聴き倒して満足していたのだが、社会人になってしばらくして別のアーティストのライブに行ったことがきっかけで、ライブ熱が否応なしに高まった。そして気がついたら、

「いつかBUMPのライブを生で見たい、もし見られたら死んでもいい」と思ったほどだった。

 

そしてそのチャンスはわりと早い段階で訪れる。

 

2013年に「WILLPOLIS」という名前の全国ツアーが開催されたのだが、運良くそのツアーの名古屋公演のチケットが当たった。

キャパ1万人という広い会場は、住んでる場所も人間性も至ってバラバラであろう、しかし一人で来たはずの自分と全く同じ目的を持った人たちで一杯になる。そうして時間になって客電が落ち、以降のことは恥ずかしながらほとんど覚えていない。いやまぁ正確に言うと何の曲をやったかぐらいはなんとなく分かるけれど。

 

気がついたらライブは終わっていて、抜け殻みたいな身体を動かして帰路につく。

始まるまで「観られたら死んでもいい」と思っていた自分は電車に揺られながら、「次にまた会うまで死ねないな」などと思ってしまった。

 

ちなみにこのツアーは翌年に続編があり、僕はそのライブにも運良く行けた。オープニングムービーがとにかく好きで、そこからずっとテンションが高揚したまま2時間以上楽しんだのを覚えている。

 

3度目は2019年。僕はその2年ほど前から仕事が忙しく、平日の仕事に加えて土日に度々出張だの研修会だのが入り、ライブどころではなくなっていた。

 

とはいえ、さすがにこの現状を打破しないと潰れるなと思い、無理矢理この年の4月にポルノグラフィティのワンマンライブを見に行ったりしてなんとかメンタルを取り戻した。9月には仕事もほぼ片付き、フォロワーさんからの誘いもあって大阪のフェスに行ったりもした。この話はまたどこかでしようかな。

 

僕は友達もろくにおらず、家族を連れて行くとかもないので一人で参戦した事しかない。一人は別に気が楽なので良いのだけど、こういう事がないとフォロワーさんに会う事もないので、緊張はするけれど喜びも非常に大きかったりする。

 

ライブの前日。あるフォロワーさんからのDMが来た。

なんでもその人はお友達と一緒に参戦するのだが、そのお友達には直前に違う予定があって合流が遅れるらしく、代わりに物販を買うのに付き合ってほしい、という様な内容だった。

 

僕はこの方とは長く相互フォローをし合っていて、なんなら面識も既にある。

かつてその方が名古屋の小さなライブハウスを使って開催したイベントに行ったことがあった。 

それが個人的には非常に楽しく、今でもその時に貰った手作りのパンフレットを大事にしまっているほどだ。

その人と久しぶりに会う事になったということで楽しみが一つ増えると同時に物凄く緊張しながら会場のナゴヤドームまで向かったのを覚えている。

 

近くのコンビニで待ち合わせたこと、とにかく人が多くて物販を買うのにかなりの時間を要したこと、無事グッズを購入したはいいけど、少しはぐれてしまって連絡を取り合いながら出口で待ち合わせたこと、ナゴヤドームの隣にイオンモールがあってそこのトイレでツアーTシャツに着替えたこと、ついでにスガキヤで腹ごしらえをしたこと。

 

普段なら一人で音楽を聴きながら適当に時間を潰していた、それはそれで気は楽だったけれど、絶対楽しいであろうライブの前にこういう楽しい時間をくれた事に(もちろんお友達が来るまでの代わりみたいなところはあるけど)、本当に今でも感謝しているし、なんなら貰ってばかりで申し訳ないなともちょっと思ってしまう。

 

そんな高揚感がプラスされた状態で、久々に生で浴びる、いつの間にか愛してやまない存在にまでなっていたバンドの音。これまでのいろいろな事が全て報われたような気がして、終わった後にはまたしても「次に見に行くまで生きなくちゃいけない」と思わされた。

それからいろいろあってまだ行けてはいないけれど、これもきっと報われる日がどこかで来ればいい。多分まだ気持ちの濃度は濃いはずだから。

 

ついでに、普通に感動する事はあっても滅多に泣かないぐらい涙腺が強い僕が、1曲目が始まった瞬間にちょっと泣いてしまったことも付け加えておきたい。